散歩をしていると、あちこち、いたるところに、タチツボスミレが咲いているのをみかけるようになりました。このタチツボスミレは、春一番に咲く可憐な花ですが、スミレの仲間では、いちばん多く見られる庶民的な花です。
♪菫程な小さき人に生まれたし 漱石
私の好きな漱石の俳句ですが、この句のスミレは、タチツボスミレのように思えてなりません・・。
保苅瑞穂さんの著書の「プルースト 読書の喜び」を、読みました。良い本は何度読んでも楽しめますが、今回は3度目です。(このブログでは、2020年8月9日、2023年3月21日に感想をアップしています。)
というわけで、この本は、無性にプルーストの名場面が読みたくなったときに読む愛読書になっています。
今回は、「Ⅶ 春の驟雨ー井上究一郎先生に」という章が心に残りました。
わたしは、井上究一郎さんを、日本でプルーストの個人全訳を最初になさった方で、とても尊敬しているのですが、保苅さんにとっても、尊敬なさっている先生だったようです。(お二人ともに東大の仏文とのこと・・)
保苅瑞穂さんが、井上究一郎先生に捧げるこの章は、春の驟雨という題もついているのですが、バルベックに咲くりんごの花の光景の描写がとてもすてきなのです。
わたしもこの場面は以前からずっと好きでした。
ノルマンディの青い海と、青い空を背景に、うすべにをさしたような白いりんごの花が、かがやくように咲いているところにアオガラが飛んできて、花のあいだを飛び回る光景は、いつも目に浮かぶように鮮やかに感じられるのでした・・。
(わたしはいつも、なぜかこの場面では、ゴッホが弟のテオに息子が産まれたときに贈ったという絵を思い出してしまうのですが、それは、空のブルーを背景にして、アーモンドの木に咲く白い花が画面一面に輝いて咲いている絵です。)
プルーストは、その光景が涙がでるほど感動的だったのは、フランスの農夫がフランスの広い街道に立っているのと同じように、野原の真ん中に立っているのが感じられたからとのこと・・。
ノルマンディの大地にしっかりと根を下ろし、海と空の青を背景に咲いている白いりんごの花、そのまぶしいばかりに感動的な光景は、すてきです。
そしてその光景は、まるで記憶の中の絵のように、読み返すたびにいつもわたしの脳裏に浮かんでくるのでした・・。
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