2014年8月27日水曜日

読書・「銀の匙」中勘助作 岩波文庫





中勘助さんの書かれた「銀の匙」は、わたしの好きな本の一冊です。



銀の匙は、読むたびに、新しい気づきがあり、
       こころがやさしくなれるような稀有な本だと思います。
              
              今回は、こんなところに惹かれました。


「鯛」についての描写ですが、清少納言の書いた枕草子のような
                   歯切れの良い文体になっています.。
       
 引用してみます。
   こんな文です。

引用28p
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
「鯛は見た目が美しく、頭に七つ道具のあるのも、恵比寿様が
かかえてるのもうれしい。目玉がうまい。うわつらはぽくぽくしながら
しんは柔靭(じゅうじん)でいくら噛んでも噛みきれない。吐き出すと
半透明の玉がかちりと皿に落ちる。歯の白いのもよい。」
ー・-・-・-・-・-・ー・-・-・-・

 本当に歯切れの良い文です。
     著者の中さんは幼少のころ、虚弱児で食も細かったということですが、
              そんな彼をつきっきりで我が子のように
                      育ててくれた伯母さんがいました。

    その伯母さんを、16歳になった中さんが
                   訪ねるシーンがあります。




     伯母さんは、最初は中さんとわからなかったのですが、
           わかった瞬間に涙をほろほろとこぼし、名前を呼びながら
            「おびんずる様」のように、頭や肩をなでまわしたそうです。

     そして、うれしさのあまり近所の人を連れてきて、
                中さんを紹介したり、
      魚屋へ行って、
          その店にあった鰈を二十幾匹も全部買ってきて煮魚を作り、
                お腹いっぱい食べるようにと勧めたということです。

     太宰治の、「津軽」にも、子守りだったタケを訪ねるシーンが
           あるのですが、その場面を思い出してしまいました。

      叔母さんとタケ、それぞれ愛情の表現方法は違っていても、
                        気持ちが溢れています。

     中さんの文を読んでいると、いつも懐かしいような思いにとらわれ、
            子供の頃のようなやさしい気持ちになれる不思議な本です。

      この作品を最初に評価したのは、
        夏目漱石だったということです・・。


                          


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