2014年8月3日日曜日

読書・「父の帽子」森茉莉著 講談社文芸文庫 (森茉莉のしあわせだった子供時代の回想・・・)



 森茉莉さんのエッセイを読むようになったのは、「父の帽子」を、読んでからでした。

 とくにその中の、「幼い日々」は、文章もすてきでしたが、こんな幼児期を過ごされた方がいらしたというのは、読むわたしまでを幸せな気分にさせてくれたのでした。

「幼い日々」からの引用です。
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 毎日、毎日、新しく始まる幸せな日々だった。千駄木の家の春、夏、秋、そうして冬。
温かい土の上に、桃色の椿の散り重なる春も、岐阜提灯が庭の闇に、薄い光りを放ってい
た夏も、金色の銀杏の葉が、カサカサと透き通った空に鳴り、やがて玄関の石畳を、温か
な黄色で埋めた秋も、そうして、冷たい雨が降り、紅葉の枯葉が、庭の隅、垣根の際に吹
きよせられて色褪せ、土に塗れるとやって来る冬。白い空気と、寂しい木立に囲まれ、障
子を閉め切った部屋の中に、炭火の匂いの漂っていた冬も、私は帰るだろう父を待ち、母
を恋して暮した。
 長い、長い、幸福な日々だった。
ー・-・-・-・-・-・
           「父の帽子」森茉莉著 講談社文芸文庫 55p、56p


 何度、読み返してみても、すてきな文だと、思います。

 森茉莉さんのしあわせだった子供時代の日々のことが、詩のように書かれていて、読んでいるわたしまで、情景が浮かび、うっとりしてしまうのです。

 そして、 幸せな子供時代を過ごした人は、その思い出で一生を生きることができるという言葉を思い出してしまうのでした・・。











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