2015年2月15日日曜日

読書・「英国に就て」吉田健一著 ちくま文庫



 吉田健一さんの書かれた「英国に就て」を読みました。

 英国には、私も10年間ぐらい住んでいたことがありますので、内容はとても納得でき、おもしろく読むことができました.




                            
 「英国、とくにイングランドは山もなく、おだやかな丘陵地帯が続き、風光明美なところで住んでいる人々は、はにかみやで引っ込み思案、動物をかわいがるやさしい心の持ち主である。しかし、ときには、無慈悲になり息の根を止めることさえすることもあり、それは、薔薇の花の棘の痛さに通じる。スコットランドが独立した王国だったときの王室の紋章は薊ですが、薊の棘は、薔薇の棘の痛さとは比べものにならないほどで、薔薇が英国の国花でもあるのは、偶然ではないような気がする。」

  と書かれています。

 



 
 そういえば、ダイアナ妃の葬儀のときに、エルトン・ジョンは、ダイアナ妃を、グッバイ・イングリッシュ・ローズと、薔薇にたとえて歌っていたのを、思い出しました。

 薔薇はやはり、著者がいわれるように英国の象徴であり、その薔薇のやさしさが、英国人の一切の原動力になっていて、英国人の忍耐力も、勇気も冷酷も、詩情もそこから出ているとも書かれています。




 英国の国花である薔薇の花からの英国論は、さすがと納得でした。

 また、英国の文化については、「文化などということが念頭にないのが、英国の文化に一貫した一つの性格であるとも言える」と、おっしゃっています。

 水洗トイレが最初に発達したのはイギリスであり、文化は生活の別名にすぎないとも・・。そういわれてみれば、英国人は生活を楽しむことにおいて達人のように思えます。

 たとえば、お気に入りの食器で楽しむTEATIME、
 家具に家、公園や建築物、犬や馬など
 エトセトラ・・・。



 それらが、人生を豊かにしてくれるというのは、わたしも同感です。
 この本の解説で、英文学者の小野寺健さんは、きわめつきの英国論とおっしゃっています。また、彼は、英文学者の立場から吉田さんの名著「英国の文学」についてもふれられていますが、吉田健一さんの英文学についての解説や批評があまりにも的確でうまいので驚いたそうです。

 吉田さんは、英国の本質を多面的に論じていて見事ですが、やはりご自身が、英国文学についての造詣が深いことをはじめ、魅力のある人物だったからこのような英国論が書けたのだと思いました。














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