ドナルド・キーンさんの自伝を読んでいましたら
こんなことが書いてありました。
キーンさんが、最初に来日なさった折のことです。
二年間の楽しく有意義だった日本滞在を終えて、
日本を離れるとき、
もう日本に来ることはできないだろうと、考えると
とても辛かったそうです。
そして、日本を離れる飛行機の中で永井荷風の
「すみだ川」を読んだとき、
荷風の美しい日本語に涙が出そうになった
ということでした。
早速、わたしも「すみだ川」を、読んでみたのですが、
こんな箇所がありました。
引用
ー・-・-・-・-・-・-・-・
朝夕がいくらか涼しく楽になったかと思うと共に
大変日が短くなって来た。朝顔の花が日ごとに小さく
なり、西日が燃える焔(ほのお)のように狭い家中へ
差し込んで来る時分になると鳴きしきる蝉の声が
一際耳立って急(せわ)しく聞える。八月もいつか
半ば過ぎてしまったのである。家の後の玉蜀黍
(とうもろこし)の畠に吹き渡る風の響(ひびき)が
夜なぞは折々雨かと誤(あやま)たれた。
ー・-・-・-・-・-・-・-・
引用
永井荷風ちくま日本文学 筑摩書房
45p
キーンさんが言われた美しい日本語とは、こういうことなのか
と思いました
「ドナルド・キーン自伝」ドナルド・キーン著
「ノリウツギ」が、咲きました。
「すみだ川」永井荷風著 ちくま日本文学
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